『ニートくノ一となぜか同棲はじめました』は、くノ一ものを現代ラブコメに思い切って寄せた作品です。妖魔に狙われる会社員を、天才くノ一が同居しながら守る。設定だけ見ると護衛忍者ものですが、実際の手触りはかなり軽やかで、白津莉のオタク気質やニート生活が作品の温度を柔らかくしています。
忍者研究の視点で見ると、面白いのは「護衛」と「潜伏」が日常生活へ変換されている点です。伊賀流忍者博物館の解説では、忍術は密偵術や変装術だけでなく、心理、薬学、火術なども含む総合的な技術として説明されています。この作品の白津莉も、ただ戦うだけではなく、生活空間に入り込み、護衛対象のそばに居続ける存在として描かれます。
もちろん、本作は史実の忍者を再現する作品ではありません。むしろ、忍者の機能を現代の読者が楽しみやすい形へ翻訳する作品です。くノ一という言葉が持つ華やかさ、隠密護衛の緊張感、妖魔退治のファンタジー、そして同居ラブコメの距離感。それらを一つの部屋に押し込めているところに、この作品らしさがあります。
国際忍者学会の会誌『忍者研究』や三重大学国際忍者研究センター周辺の研究では、忍者像が時代ごとに作り替えられてきたことも重要な論点になります。そう考えると、本作の白津莉は、戦国の忍びではなく、令和のポップカルチャーが作ったくノ一像です。強い、かわいい、守る、だらける。この混在こそ現代忍者フィクションの面白さです。
Ninjack的には、重い忍者バトルの合間に読む作品としてかなりおすすめです。忍者の歴史を学ぶというより、忍者というモチーフがいまどれだけ自由に遊べるかを見せてくれるタイプ。くノ一、護衛、同居、妖魔、ラブコメという言葉に引っかかるなら、まず1巻から試してみてください。













